おもてなし ・ ホスピタリティの哲学 おもてなしの場を演出しましょう       私は、おもてなしの場は生の舞台のようなもので、この舞台を演出するのがサーヴィスパーソンの役割だと考えています。   ラグジュアリーホテルを利用するお客さまは、単に宿泊しに来ているわけではありません。   一流料亭を利用するお客さまは、ただ飲んだり食べたりできればいいと思っているわけではないでしょう。   老舗旅館でゆったりしようと思っていたのに、大音量でハードロックが流れていたら、お客さまは幻滅するはずです。   それよりも、BGMとして静かな琴の音を流したほうがよいかもしれません。   季節の花を飾り、お香を焚いてみるのもよさそうです。   サーヴィスを利用するお客さまは、機能を求めているわけではなく、その時間と空間のすべてを堪能したいのです。   その期待に応えるために、演出が必要になります。   同行者との楽しい会話、きらびやかな調度品、耳に心地よい音楽など、すべてが演出なのです。   舞台監督になったつもりで、違和感のあるものは取り除き、お客さまの期待に応える空間をつくり上げていきましょう。  
求められている役割を把握しましょう
  さらに、サーヴィスパーソン自身も舞台装置の一つだという意識が必要です。   お客さまの前に立ったら、その舞台にふさわしい役を演じるのです。   高級ホテルの従業員は、ノリの利いた制服をぱりっと着こなし、ピンと背筋を伸ばして立っています。   人と接するときは、常に柔らかな笑顔と丁寧な言葉使いを忘れず、お客さまの要望には最後までしっかりと応えます。   ところが、もしかしたら本来のその人は、大雑把な性格なのかもしれません。   休日には一日中だらだらと寝転がってばかりで、家族から「だらしがない」と叱られていることもあり得ます。   いつものように笑顔でお客さまをお迎えしていますが、じつは昨日から夫婦げんかをしていて、内心はずっとイライラしている可能性もあります。   それでいいのです。サーヴィスパーソンは、自分らしく個性を出して働く必要はありません。   ステージに立つ役者と同じで、お客さまの前では、期待される役柄を徹底して演じ切る。   それがプロフェッショナルの姿勢というものです。   ただし気をつけたいのは、飽くまでもお客さまが求める役を演じるということです。 先日たまたま立ち寄ったコンビニエンスストアでは、マナー教育に力を入れているのか、とても丁寧な接客をしていました。   レジ前では、一人ひとりお客さまに「いらっしゃいませ」とお辞儀をし、ポイントカードを利用したお客さまには「○○様、いつもありがとうございます」と名前を呼びかけていました。   それが悪いとはいいませんが、コンビニエンスストアに最敬礼のお辞儀を求めている人はそれほど多くはないでしょう。   それよりも手早く会計をしてもらえるほうがよいですし、不特定多数が行き交う場所で、個人情報である名前を呼ばれるのを嫌う人もいるはずです。   ホテルの従業員には、折り目正しく丁寧な態度で接してほしいものですが、居酒屋のホールスタッフであれば、「いらっしゃい!」などと元気よく声を掛けてもらったほうが、にぎやかで楽しい気分になれそうです。   おもてなしをするうえでは、この舞台にはどういう役が期待されているのか、冷静に判断してほしいと思います。  
執事が教える 至高のおもてなし―心をつかむ「サーヴィス」の極意
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記事執筆者・監修者

新井 直之
(NAOYUKI ARAI)

執事
日本バトラー&コンシェルジュ株式会社 代表取締役社長
一般社団法人 日本執事協会 代表理事
一般社団法人 日本執事協会 附属 日本執事学校 校長

大富豪、超富裕向け執事・コンシェルジュ・ハウスメイドサービスを提供する日本バトラー&コンシェルジュ株式会社を2008年に創業し、現在に至る。

執事としての長年の経験と知見を元に、富裕層ビジネス、おもてなし、ホスピタリティに関する研修・講演・コンサルティングを企業向けに提供している。

代表著作『執事が教える至高のおもてなし』『執事だけが知っている世界の大富豪58の習慣』。日本国内、海外での翻訳版を含めて約20冊の著作、刊行累計50万部を超える。

各ビジネス関連メディアにてインタビュー・寄稿記事を連載中。
日経ビジネス電子版
ダイヤモンドオンライン
プレジデントオンライン
東洋経済オンライン
現代ビジネス

本物執事の新井直之

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