一日一善を習慣にしましょう
私が知る限り、一流のサーヴィスパーソンというのは、日常生活の場でもサーヴィスパーソンです。
一流ホテルに務める私の知人は、街中で道を尋ねられると、まるで自分のホテルにいるかのような紳士的な態度で、丁寧に教えています。
頼られればそれに応えるということが、習慣になっているのです。
私たち執事も同様です。
面白いのは、執事数人で食事に行くと、お互いにすごく気を遣い合うのです。
コップが空になっていたら、誰かがすぐに気づいてお酌をするので、手酌する人などいません。
会話も、全員がまんべんなく話せるように、互いに話を振り合い、適度な相槌を打ち合います。
傍から見ていたら、本当に仲のいい和やかなグループに見えるのではないでしょうか。
実際に執事同士の集まりは気持ちが楽です。
一般的に気を遣い合うというと、ストレスになるように感じるかもしれませんが、私たち執事にとって、気を遣うのは当然のこと。
むしろ、互いに気を遣い合い、和やかな時間を過ごせるので、リラックスできる時間になるのです。
もちろん、一流のサーヴィスパーソンも最初から一流だったわけではありません。
そこでサーヴィスマインドを維持・向上する習慣として、私の会社では、社員は必ず、一日一善をおこなうことを義務づけています。
毎日どのような一日一善をおこなったのか、日報に書いて提出してもらっています。
一日一善の狙いは、単に「一日ひとつ善いことをしよう」にあるのではなく、それによって一日ひとつ誰かに「ありがとう」といってもらうことです。
じつは人から感謝してもらえるのはとても気持ちのいいもの。
その快感を体に染みこませて、人のために動くことを習慣化することを狙っています。
一日一善はおもてなしの基本です
一日一善の内容はどんなものでもかまいません。
「お客さまの家の玄関を丁寧に掃除しました」や、「夜、お客さまのご自宅でパーティがあるので、グラスを念入りに磨きました」というものもあります。
必ずしもお客さまへのサーヴィスである必要はなく、「電車でお年寄りに席を譲りました」でもよいのです。
本当に何もなければ、「コンビニで募金をしました」でもかまいませんが、できれば直接人と関わることがよいでしょう。
重いキャリーバックを持って階段を上っているお年寄りを見かけたら運ぶのを手伝ったり、電車の中で具合が悪そうにしている人には、すぐに声を掛けて席を譲るというように、本当に助けを必要としている人に手を差し伸べると、心から「ありがとう」といってもらえるはずです。
このような行動は、相手の心の機微を察知する訓練にもなります。
女性の荷物を持ってあげようとしたら、下心があると思われて嫌な顔をされてしまったり、ぐずっている子供にアメをあげようとしたら、「虫歯になるからやめてください」とお母さんに怒られてしまったなど、親切の押し売りは、ときに迷惑がられることもあります。
一日一善は「おもてなし力」「サーヴィス力」の基本ですから、弊社では新人からベテランまで全員が実践しています。
もちろん私も例外ではありません。
人にもよりますが、2ヵ月も続けると、習慣化して自然と親切な行動が取れるようになります。
大切なのは、とにかく毎日続けること。こうした地道な積み重ねが、本当に求められるおもてなしの提供につながるのです。

よくあるご質問
おもてなしの研修は企業向けに依頼できますか?
はい。業界に合わせた講演・研修プログラムをご提供しています。講演・研修ページをご覧ください。
新井直之への講演・研修依頼はどこから行えますか?
講演・研修ページよりお問い合わせください。累計1,000回以上の実績がございます。
参考文献・外部リンク
- デロイト トーマツ(2025)「国内富裕層意識・購買行動調査」
- 博報堂(2025)「新富裕層調査2025」
- Heskett, J.L. et al. (1994). Harvard Business Review
- 新井直之(2017)『執事が教える至高のおもてなし』
関連記事
講演・研修のご案内
本稿のテーマを含む講演・研修プログラムをご提供しています。
講演・研修の詳細・ご依頼はこちら

関連コラム
車列運行管理における「連携」
車列運行管理における「連携」の絶対性個人の運転からシステムとしての防衛へ 「個人判断の禁止」がVIPの命と組織の信用を守る 記事公開日: 2026年5月13日 目次 一般の運転と車列運行の決定的な違い…
AIによるスケジュール最適化と先回り提案
AIによるスケジュール最適化と先回り提案〜「時間管理」から「時間設計」へのパラダイムシフト〜 提案の価値を最大化する、AIと人間の戦略的アプローチ 記事公開日: 2026年4月26日 目次 なぜ執事は…
未来予測型おもてなしの構築方法
未来予測型おもてなしの構築方法〜「対応力」の時代から「予測力」の時代へ〜 属人化を排除し、AIでホスピタリティをスケーリングする戦略 記事公開日: 2026年4月25日 目次 従来型「おもてなし」が抱…
執事の思考をAIに実装する技術観察力の正体「いつもと違う」に気づくメカニズム
執事の思考をAIに実装する技術観察力の正体「いつもと違う」に気づくメカニズム 人間の記憶の限界を超える、「記録×比較」のAIパーソナライズ戦略 記事公開日: 2026年4月14日 目次 観察力の正体は…
AIでホスピタリティは向上するのか?
AIでホスピタリティは向上するのか?テクノロジーの限界と、人間にしかできない仕事の本質 感情の非合理性と「意味化」が導く、次世代のビジネス価値創造 記事公開日: 2026年4月13日 目次 AIがもた…
AI時代の富裕層の価値観意思決定における「孤独」の正体
AI時代の富裕層の価値観意思決定における「孤独」の正体 —— 心理学と国際データで読み解く、次世代ビジネスの核心 —— 【エグゼクティブ・サマリー】 長年、世界の超富裕層やトップリーダーの方々を最も近…