おもてなし ・ ホスピタリティの哲学 不可能を可能にするのが執事の仕事です     私ども執事のお客さまは、いわゆる大富豪と呼ばれる方々がほとんどです。   大富豪は、ハイグレードなサーヴィスに慣れているといっても、気難しいわけでも、お客さまとして特別に扱いにくいわけでもありません。   むしろ私どものお客さまは、ポジティブで心が広く、人間的にも魅力のある方がほとんどです。   ただし一つだけ、明らかに一般の感覚と異なる点があります。   それは、発想のスケールがケタ違いに大きいという点です。   この仕事を始めたころは、お客さまから思いもかけない要望を受けて驚いたことがありました。   たとえば突然、   「仕事ができたから、明日の朝7時までにニューヨークへ行きたい」   といわれたことがあります。それが夜7時でしたから、12時間後です。   普通に考えれば無理な話です。   成田空港に行くだけでも2時間以上かかるでしょうし、航空機のチケットの手配も間に合いません。   そもそも東京・ニューヨーク間のフライトは12時間以上かかるのです。   もちろん、お客さまはふざけているわけでも、意地悪でいったわけでもありません。   「近所に買い物に行きたいから、ちょっと車を出してほしい」くらいの気楽さで、大真面目にその指示を出したのです。   それが不可能な理由はいくつも思い浮かびますし、論理的に説明することもできます。   ところが大富豪に、そんな言い訳は通用しません。   「何もわざわざ成田空港まで行かなくても、羽田空港でプライベートジェットをチャーターすればいいじゃないか」   と、いとも簡単にいわれるでしょう。   私もいまでは、即座にそう発想して対応することができます。   もちろん一般の人には、プライベートジェットをチャーターするような奥の手は、まず使えません。   莫大な資産がある大富豪だからこそ、打てる手も多いのは事実です。   ただ、大富豪にまで上りつめる方々というのは、そもそもの考え方、物事に取り組む姿勢が根本的に違うのです。  
「できない」を「できる」に変えてしまいます
  私たちは自分でも気づかぬうちに、自分のなかに限界を設けて、現実的な範囲内で解決策を考えます。   ところが、大富豪は、発想の根底に「不可能なことは何もない」という考えがあります。 だから常識を越えた斬新なアイデアを打ち出し、「絶対にできる」という確信を持って具体的な行動を起こします。   そうして不可能を可能にしてきたからこそ、人並み外れた富を築くことができたのです。   大切なのは、こうしたお客さまにサーヴィスを提供するからには、執事も同じ発想で対応にあたらなければいけないということです。   私も最初はそのことをよく理解していませんでした。   執事の仕事を始めたころ、あるお客さまから、現実的にはまず不可能だろうと思う要求を突きつけられて、思わず「それは無理です」といってしまったことがあります。   つまりお客さまの要望に、〝NO〟を突きつけてしまったわけです。   結果的に、そのお客さまとは契約終了になってしまいましたが、最後にこんなことをいわれました。   「私は〝NO〟を〝YES〟にするために、君たちに高いお金を払っているんだ。たとえ不可能なことでも、どうすれば可能になるかを考える努力さえ放棄してしまったら、君たちを雇う意味がないんだよ」   私はこの経験から、執事とは、〝NO〟といった途端にクビになってしまう仕事なのだと学びました。   不可能を可能にしてトップに上りつめてきたお客さまを相手にする世界は、それだけ厳しいのです。  
執事が教える 至高のおもてなし―心をつかむ「サーヴィス」の極意
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記事執筆者・監修者

新井 直之
(NAOYUKI ARAI)

執事
日本バトラー&コンシェルジュ株式会社 代表取締役社長
一般社団法人 日本執事協会 代表理事
一般社団法人 日本執事協会 附属 日本執事学校 校長

大富豪、超富裕向け執事・コンシェルジュ・ハウスメイドサービスを提供する日本バトラー&コンシェルジュ株式会社を2008年に創業し、現在に至る。

執事としての長年の経験と知見を元に、富裕層ビジネス、おもてなし、ホスピタリティに関する研修・講演・コンサルティングを企業向けに提供している。

代表著作『執事が教える至高のおもてなし』『執事だけが知っている世界の大富豪58の習慣』。日本国内、海外での翻訳版を含めて約20冊の著作、刊行累計50万部を超える。

各ビジネス関連メディアにてインタビュー・寄稿記事を連載中。
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本物執事の新井直之

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