人気フィトネストレーナーに学ぶホスピタリティの秘訣 第3回
ゲスト:
フィットネストレーナー・インストラクター
聞き手:
日本バトラー&コンシェルジュ株式会社
代表取締役社長
執事・ビジネス書作家・講演家
若木:例えば「このトレーニングをしたら、この効果があるので、これをします。」というトレーニング方法もあるのですが、お客様がスクワットをしたいのであれば、そのトレーニングを優先する為に「お客様が何をしたいか?」を聞いて、要望の中からできる事があるかを質問して、お客様の要望に沿った方法をしています。
新井:それはなぜですか?
若木:満足して欲しいからです。
人に押し付けられたことをすると、人からやらされていると感じてしまうので、すぐ辞めてしまうことが多いのです。
それよりも、お客様自身が、自分で考えることで、向上心や継続という効果も、ありますが、満足に至ることができるので、それを優先しています。
結果的に、なかなか結果が、出ない時のモチベーション維持にも繋がるからです。
新井:それは、とても理に適った話ですね。
若木さんの聞いて感じたのは、ドラッカーのマネジメント※1ですね。
ドラッカーはマネジメントの基本として、「部下には不得意な事をやらせるのではなく、得意な事をやらせなさい」と述べています。なぜかというと、得意な事は黙っていても進んでやる、その中で自分が「ここは不足だな。」と思ったら、苦手な事でも少しずつやることができ、最終的に大きなゴールに辿り着けるというマネジメントの手法の一つです、これは、まさしく、先ほど若木先生が仰っていたことドラッカーの理論と一緒で、ビジネスパーソンにも転用・活用でき、継続的に5年~10年に渡って習慣化してもらうための秘策でもあります。
若木:トレーナーに関しては、お客様にゴールして貰うのが目的なので、ゴールまでに継続してもらう為に、そうしようと考えました。
新井:なるほど、質問なのですが、様々な理由で運動をやらなければならない人に対してのモチベートしていく為にはどういったことをしていますか?
若木:よく褒めています、最初に会った時の服装・トレーニング中・前後でもよく褒めるようにすることで、褒められて嫌な人はいないですし、それを意識することで、自分自身が身なり・動作に対して気を遣うことができるからです。
新井:その考え方は、実は私が出している本※2でも、書いています(笑)
若木:ええ?!(笑)
新井:お客様におもてなしやホスピタリティを感じて頂く第一歩が「褒めること」なんです。
人間は、自分は特別な存在だという「自己承認欲求」を満たしたいので、褒められると、「自分はこれが得意だ」と自己承認欲求が満たされるからです。
そして、自分の自己承認欲求を満たしてくれた相手には信頼しやすい、だから、その相手からのアドバイスは素直に聞こうとする。
そういったことを踏まえて、私は若木先生の指導がうまいと思います。
あと、若木先生は「否定を使わない」ですよね、それがとても感心しました。
若木:そうですね、否定を使うより、頑張ってもらうために、もっと効率が良い、安全性があるよと、背中を押すつもりで指導する様に考えています。
新井:すごいですね、人間の理に適った指導をされて、しかもお客様は自己承認欲求を満たされて、気持ちよく帰って頂けますし。
若木:新井さんが相手のモチベーションを高めるためにやっている方法はありますか?
新井:若木先生と同じ褒める手法を使っていました、結果を褒めるよりも、プロセスと行動を褒めるようにしていました。
やはり、結果とは、必ずしも出るとは限らないので、結果に行く為の行動を褒めるようにしています。
若木:一言がうれしい時ってありますよね。
新井:そうですね、人に褒められたことは、ずっと覚えていますよね。
私も30年ぐらい前に褒められたことを今でも覚えています。
それは、高校生時代の担任の先生から、「ブレザーが似合うね。」と言われたことなのですが、それ以来スーツを着るのが好きになりました。
あと、若木先生のところで、ダイエットして25キロ体重がやせた時に、周りの人からお褒めの言葉を頂いたのですが、それが凄く原動力になりました。
若木:モチベーションは大切ですよね
新井:はい、そうですね。
モチベーション繋がりで質問なのですが、若木先生がお客様にモチベーションを保ってもらうためにやっているフォローアップなどありますか?
若木:今はコロナなので、控えていますが、よく話をしていました。
レッスンが終わったらすぐに帰る事は無かったです。
新井:確かに、よく残っていましたよね、でも、それはとても重要だと思います。
もちろん、フリーランストレーナーの方は仕事が終われば、帰っていいと思いますが、その後に、オフのコミュニケーションをとるかによって、「また、楽しく話したいから行こう」となるのか「今は、仕事が忙しいからやめよう」となる違いは多き大きいですよね。
新井:人間の欲求「マズローの欲求5段階説」※3という定義がございまして、その中の三段階の社会的欲求の、誰か人と繋がりたいという欲求を満たすことで、お客様の満足度が急激に上がるので、一般的なサービス業は、三段階以上を満たせるのが重要となってきます。

質の高いサービスを提供することも大切ですが、人との交流も大切であります。なぜかというと、仕事で失敗した時に、社会的欲求を満たしていると、クレームになる事が少ないからです。
これは、サービス業以外でも通用することで、例えば昇進などに関しても反映できる事で、能力も重要ですが、結果的に上司や会社の満足度を上げる事が自分の評価に繋がります。
※1オーストリア・ウィーン生まれのユダヤ系オーストリア人経営学者。「現代経営学」あるいは「マネジメント」 の発明者。
※2「執事が教える至高のおもてなし」
※3マズローの欲求、人間の欲求を5段階で構成されていることを示した説であり、一番下の生理的欲求から上に向かってクリアすることで最終的に自己実現に達するという理論
