おもてなし ・ ホスピタリティの哲学 心を動かす「おもてなし」が、特別感を生み出します       前にも書いたとおり、私はお客さまが感動してしまうほどの最高水準のサーヴィスのことを、「おもてなし」と呼んでいます。   単に「よかったよ」「満足したよ」と声をかけてもらえるレベルでは、おもてなしと呼ぶにふさわしいものではありません。   お客さまに心に響き、心から感謝してもらえるようなサーヴィスだけが、本物のおもてなしだと考えています。   最初に断っておきたいのは、私は何もおもてなし以外のサーヴィスを否定しているわけではありません。   たとえば、チェーンオペレーションで運営されている店舗などは、販売戦略やサーヴィスコンセプトなどの企画立案を本部が担当し、現場で接客にあたるスタッフは、共通の方針やマニュアルに沿って動くことが多いと思います。   まずは元気にご挨拶をしてお席に案内し、注文を取る際には復唱し、料理ができ次第速やかにテーブルにお持ちする。   失礼のないように、全員が決められたことを手順通りおこなっていくというのも、立派なサーヴィスです。   人手不足が叫ばれるなかで、近年サーヴィス業界では、接客スタッフを確保すること自体が難しく、なかなか十分な教育ができないケースも少なくありません。   そのかわりに、メニューやお水を最初からテーブルにセットしておいたり、お客さまがタッチパネルで注文できるようにしたりなど、効率的なオペレーションの仕組みを導入して、最低限のお客さま満足を確保するというのも、一つの経営判断だと思います。   しかし、厳しいコスト競争から抜け出して、付加価値の高い独自のポジションを確立しようとするのであれば、確実におもてなしが必要になります。   共通のルールやマニュアルは、「いつでも・どこでも・誰にでも」対応できる標準化のためのツールであって、差別化を図ることはできません。   特別感を生み出すのは、「いまだけ・ここだけ・あなただけの」のおもてなしなのです。  
理不尽な要求の裏側の真意を探りましょう
ある日本料理店は、2人分の予約を受けたところ、3人分の料理を用意してほしいといわれました。   最初その店のスタッフは「理不尽な要求を突きつけられた」と思ったそうです。   マニュアルに従うのであれば、「それはできかねます」とお断りしても問題はなかったのですが、結果的に店はその要望に応えました。   お客さまに詳しく事情を聞いてみると、じつはその店は、亡くなったご主人との思い出の場所なのだといいます。   正式な法要ではないけれど、お子様と2人、故人を偲んで食事をしたいので、陰膳を用意してほしいということでした。   事情を知った店側は快く要望に応え、遺影などを飾れるように広めの個室を用意しました。   さらには、ささやかな志として、そのお客さまのためだけにお花を生けてお部屋を彩りました。   しかもそのお花は、接客担当者が自腹を切って用意したものだったといいます。   当日、なごやかな会話のなかで店側の温かい心遣いを知ったご遺族は大変感動し、以来、毎年利用していただけるようになったそうです。   誰もができることを普段通りにやっている分には、人の心を動かすまでにはいたりません。   一見、理不尽とも思える要求や難しい課題にしっかりと応えたからこそ、そのお客さまにとって、ほかとは違う特別な存在になることができたのです。  
執事が教える 至高のおもてなし―心をつかむ「サーヴィス」の極意
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記事執筆者・監修者

新井 直之
(NAOYUKI ARAI)

執事
日本バトラー&コンシェルジュ株式会社 代表取締役社長
一般社団法人 日本執事協会 代表理事
一般社団法人 日本執事協会 附属 日本執事学校 校長

大富豪、超富裕向け執事・コンシェルジュ・ハウスメイドサービスを提供する日本バトラー&コンシェルジュ株式会社を2008年に創業し、現在に至る。

執事としての長年の経験と知見を元に、富裕層ビジネス、おもてなし、ホスピタリティに関する研修・講演・コンサルティングを企業向けに提供している。

代表著作『執事が教える至高のおもてなし』『執事だけが知っている世界の大富豪58の習慣』。日本国内、海外での翻訳版を含めて約20冊の著作、刊行累計50万部を超える。

各ビジネス関連メディアにてインタビュー・寄稿記事を連載中。
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