ワインリストで迷うリーダーは、
決断でも迷う。
一本のボトル選びに透ける
「経営者の美学」

会食の席で、分厚いワインリストを前に固まってしまう。
あるいは、知ったかぶりをして一番高いワインを頼む。

リーダーとして、これほど恥ずかしいことはありません。
ワイン選びは、知識のテストではありません。
「その場の目的を理解し、予算内で最適な解を出し、同席者を心地よくさせる」という、高度な意思決定のプロセスそのものです。

私が執事として見てきた一流の経営者たちは、ワインとの向き合い方もまた、一流でした。
今回は、ワインを通して見るリーダーの品格と、決断の美学についてお話しします。

銘柄を暗記するな
「構造」を理解せよ

ビジネスにおいて、枝葉末節を暗記するよりも、全体構造を把握することの方が重要であるように、ワインもまた「構造」で理解すべきです。
何千種類もの銘柄を覚える必要はありません。

「この品種はこういう性格」「この産地はこういう特徴」。
この基本原則(プリンシプル)さえ押さえておけば、未知のワインに出会っても、おおよその味と価値を推測できます。
本質を掴む力。これは経営判断における「勘所」と同じです。
細部に囚われず、大局を見る。
ワイン選びには、その人の思考の癖が如実に現れるのです。

「わからない」と言える
強さを持て

三流のリーダーは、無知をさらけ出すことを恐れ、知ったかぶりをします。
一流のリーダーは、ソムリエを「部下」や「パートナー」として使いこなします。

「今日は大切な商談で、相手は重めの赤が好きだ。予算はこれくらいで、おすすめはあるか?」
このように、目的・条件・好みを明確に伝え、後はプロに任せる。
これは、組織における「権限委譲(デレゲーション)」と同じです。
自分の専門外のことは、その道のプロに敬意を持って任せる。
その潔さと、的確な指示出しができるかどうかが、リーダーの器を決めます。

一番高いワインを選ぶのが
最高の選択ではない。
その場に「調和」するワインを選ぶのが
最高の知性だ。

Arai Naoyuki Philosophy

所作に宿る
「ノイズキャンセリング」能力

最後に、飲み方について。
グラスをカチンと合わせたり、音を立ててすすったり。
こうした「ノイズ」を撒き散らすリーダーは、周囲への配慮が欠けています。

執事が音を立てずに抜栓し、静かに注ぐように。
リーダーもまた、組織内のノイズ(混乱や不安)を鎮め、メンバーが能力を発揮しやすい静謐な環境を作る義務があります。
あなたのワインを扱う手つき一つが、あなたが組織をどう扱っているかのメタファー(隠喩)として見られていると自覚してください。

三流のリーダー

・値段やブランドで選ぶ
・知ったかぶりをする
・音を立てて飲む
・ワインを「ひけらかす道具」にする

一流のリーダー

・相手の好みと料理で選ぶ
・ソムリエを味方につける
・静かに美しく飲む
・ワインを「潤滑油」にする

まとめ

ワインは、単なるアルコールではありません。
それは、あなたの教養、決断力、そして周囲への愛を映し出す鏡です。

グラス一杯の中に、
あなたの人生哲学を注げ。

次回の会食では、ぜひ「価格」ではなく「物語」と「調和」でワインを選んでみてください。
その一本が、あなたのビジネスと人間関係を、より豊かなものにしてくれるはずです。

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記事執筆者・監修者

新井 直之
(NAOYUKI ARAI)

執事
日本バトラー&コンシェルジュ株式会社 代表取締役社長
一般社団法人 日本執事協会 代表理事
一般社団法人 日本執事協会 附属 日本執事学校 校長

大富豪、超富裕向け執事・コンシェルジュ・ハウスメイドサービスを提供する日本バトラー&コンシェルジュ株式会社を2008年に創業し、現在に至る。

執事としての長年の経験と知見を元に、富裕層ビジネス、おもてなし、ホスピタリティに関する研修・講演・コンサルティングを企業向けに提供している。

代表著作『執事が教える至高のおもてなし』『執事だけが知っている世界の大富豪58の習慣』。日本国内、海外での翻訳版を含めて約20冊の著作、刊行累計50万部を超える。

各ビジネス関連メディアにてインタビュー・寄稿記事を連載中。
日経ビジネス電子版
ダイヤモンドオンライン
プレジデントオンライン
東洋経済オンライン
現代ビジネス

本物執事の新井直之

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