富裕層はAIをどう見ているか ― 執事が現場で聞いた本音・建前と、対応の分かれ目
富裕層のAIへの関心は、一般に思われているよりもはるかに高い。しかしその「本音」は、表で語られることと随分違います。執事という立場でしか聞けない言葉と、現場で見てきた分かれ目を、そのままお伝えします。
「富裕層はAIを嫌っている」「いや、いち早く使いこなしている」——どちらの見方も、現場の実像とは少しずれています。実際には同じ富裕層の中で反応が二極化しており、しかもその二極は、公の場での発言だけを聞いていても見分けがつきません。
執事が立ち会うのは、会議室でも取材の場でもない、お客様の私的な時間です。そこで伺う言葉は、公の場で語られる内容と驚くほど異なります。
富裕層がAIに関心を持ち始めた転換点
富裕層のお客様のAIへの関心が急速に高まったのは、3年ほど前からです。きっかけはChatGPTの登場でした。
最初にいただく反応は、たいてい「あれは便利だね」という軽い感想です。ところが、そこからの変化が速い。次第に「私のビジネスにどう使えるか」「投資対象として有望か」という、きわめて実践的な関心へと移っていきました。感想の段階に長く留まらず、すぐに「自分の事業と資産にとって何を意味するか」に変換される。富裕層の方々に共通するこの思考の癖が、AIでもそのまま現れたのです。
関心度と理解度には、大きな差がある
興味深いのは、ひとくちに富裕層と申し上げても、AIへの関心度と理解度に大きな差があることです。
テクノロジー系の事業をお持ちの方は、驚くほど深く研究されています。一方、伝統的な産業に基盤を持つ方は、距離を置かれるケースが多い。関心がないわけではなく、「自分の事業の本質に関わる話なのか」を見極めておられる、という感触です。
AIへの態度の違いは、AIそのものへの好悪ではなく、その方が事業と人間関係をどう捉えてきたかという、より古い部分に根ざしているのです。
公の場で語られる「建前」
公的な場や初対面に近い場面で富裕層が語るAI観は、おおよそ次の3つに集約されます。
- 「AIは便利なツールだが、最終判断は人間がする」
- 「個人情報の扱いは慎重に」
- 「まだ過渡期だから様子を見ている」
いずれも理性的で、慎重で、非の打ちどころのない意見です。私はこれらを嘘だとは思いません。建前とは、その方が「公の場で自分はこう見られるべきだ」と考えている姿の表明だからです。
問題は、この建前だけを前提にサービスを設計してしまうことです。「最終判断は人間がする」を額面どおりに受け取ると、AIを一切使わない体制が正解に見えてきます。しかし、信頼関係が深まったあとに伺える言葉は、少し——ときには、かなり——異なります。
執事にだけ打ち明けられた「本音」
ここからご紹介するのは、長くお付き合いのある方々から、日常のふとした場面で伺った言葉です。なお、個人が特定されないよう、内容は変えたうえで掲載しています。それでもこの4つには、公の場では決して出てこない温度が残っています。
実は毎日AIを使っている。でも周りには言わない。なんとなく、使っていることを知られたくない
驚かされるのは使用頻度ではなく、「使っていることを知られたくない」という感覚のほうです。理由を尋ねても明確な答えは返ってきません。「なんとなく」なのです。
ここには、自分の判断は自分の頭から出たものであってほしい、という願いが横たわっています。日々の意思決定を「自分で決めてきた」ことがアイデンティティそのものである方にとって、AIに相談している事実は、たとえ結果が良くても座りが悪い。使っている量と、使っていると公言できる量は、まったく別なのです。
AIに相談した方が、人間に相談するより気を使わなくていいから楽だ
もっとも示唆的な言葉でした。富裕層の方は相談相手に不自由していないように見えます。しかし実際には、相談することそのものにコストを感じておられる。
誰に相談するかは、その相手に情報を渡すことであり、力関係にも影響します。心配をかけるかもしれない、評価が変わるかもしれない——そうした計算が無意識に働きます。AIにはその計算が要りません。「気を使わなくていい」という一言には、人に囲まれているからこそ生じる疲れが表れています。
私の会社でAIを大規模に導入しているが、現場のスタッフには言っていない。反発が怖いから
経営者としての判断と、組織の感情との板挟みです。導入すべきだと確信しながら、正面から掲げられない。「反発が怖い」という言葉を経営者ご自身の口から聞く機会は、そう多くありません。
この言葉が示しているのは、AI導入の最大の障壁が技術でも費用でもなく、人の感情だということです。そして経営者は、その感情に向き合う役目を誰にも委ねられずに抱えている場合がある。事業の外側にいる人間が静かに話を伺う意味は、ここにあります。
AIが自分より賢くなる日が来たら、どうすればいいのかと、夜中に考えることがある
もっとも静かで、もっとも重い言葉でした。日中の姿からは想像しにくい問いです。
注目すべきは「夜中に」という一語です。誰にも話していない、話す相手がいない問いだから、夜中に一人で考えることになる。公の場では「まだ過渡期だから様子を見ている」と語る同じ方が、夜には自分の存在価値を考えている。この落差こそが、富裕層のAI観の実像です。
4つの言葉に共通するもの
4つの言葉に通底しているのは、富裕層がAIという変化に表向きとは異なる複雑な感情を抱えているという事実です。利便性は認めている。すでに使っている。それでも、使っていると言えない。頼っていると見られたくない。そして、その先にある変化を静かに怖れている。この複雑さを踏まえずに「富裕層はAIを好むか否か」を論じても、実務の役には立ちません。
AI接客を嫌う富裕層/歓迎する富裕層の境界線
まず、大前提を申し上げます。富裕層は「AIが嫌い」なのではありません。「質の低いサービスが嫌い」なのです。
AIを使っていても質が高ければ歓迎されますし、人間が対応していても質が低ければ容赦なく不満を持たれます。境界線はAIか否かではなく、質の高さにある。この順序を取り違えると、対策の方向がまるごとずれます。
嫌悪感を持たれるAI接客の3パターン
現場で観察してきた限り、富裕層が明確な嫌悪感を示すAI接客には3つの型があります。
- 機械的な応答の繰り返し。質問に対して定型文で返すチャットボット型の対応です。「私の状況を理解しようとしていない」という印象を与えます。富裕層の方ほど状況は個別的で例外的ですから、定型文は、その個別性を最初から見ていないという宣言に等しく受け取られます。
- AIが介在していることを感じさせる接客。「少々お待ちください(AIで検索中)」「システムによると〜」という言い方です。AIを使っていることを感じさせること自体が、サービスの品質を下げます。
- 過去の情報を活かさない画一的な提案。以前お伝えした好みや状況が反映されていない提案です。「また同じことを言わなくてはいけないのか」という疲弊感を生み、一度生じたこの疲弊は、回復に非常に時間がかかります。
医師でいらっしゃるお客様は、こうおっしゃいました。AIの診断精度は認めるが、患者としてAIに診断されたくはない。同様に、VIPサービスでAIに対応されたくはない、と。能力を認めることと、自分に使われることを受け入れることは、まったく別なのです。
「便利だ」と感じていただけるAI活用
一方で、富裕層が便利・快適だと感じるAI活用も確かに存在します。ひとつは「細かいことまで覚えている」という体験です。過去の好みや特記事項が次回以降の対応に自然に反映されている。これはAIによる情報管理の恩恵ですが、お客様は「この担当者は私のことをよく分かっている」と感じられます。もうひとつは「提案の精度が高い」という体験。実際にはAIによる情報整理が担当者の提案力を底上げしているのですが、お客様にAIの存在は見えていません。
境界線は「見えないAI」と「見えるAI」
嫌われるAI接客と歓迎されるAI活用を分けているのは、ただ一点、「AIが見えるかどうか」です。
| 区分 | お客様に届いているもの | 現れ方の例 | 結果 |
|---|---|---|---|
| 見えるAI | 対応の中にAIの存在が滲み出ている | 機械的な言葉遣い、画一的な対応、「システムで確認します」 | 品質の低下として受け取られる |
| 見えないAI | 高品質な人間のサービスだけ | 細部まで記憶された対応、精度の高い提案 | 「よく分かってくれている」と評価される |
見えないAIとは、AIが完全に裏方として機能し、お客様には高品質な人間のサービスだけが届いている状態です。これが、富裕層が歓迎するAI活用の姿にほかなりません。
この境界線を誤った実例を、ふたつ挙げます。ある百貨店の外商部門では、購買履歴から次回の提案商品を予測するシステムを導入しました。ところが外商員がAIの提案リストをそのままお客様にお見せしたところ、「カタログを渡されただけ」という厳しいご指摘を受けています。その後、AIの提案を「参考情報」に位置づけ、外商員自身の目利きと組み合わせる運用に変えたところ、顧客満足度は18%向上しました。
もうひとつは、チェックイン対応を全面的にAI端末に切り替えた高級ホテルです。効率は確かに向上しましたが、VIPゲストから「まるで自動販売機で買い物をしているようだ」というお叱りを受け、3か月後にVIPフロアのみ専属スタッフによる対応を復活させています。
PwC Japanの2025年調査でも、AIの効果を最大化している企業は「AIを事業の中核に据えつつも、人間の判断を介在させている」企業だと示されています。中核に据えることと、表に出すことは別の話なのです。
それでも二極化する、富裕層のタイプ
「見えないAI」が原則である一方、AIによる対応そのものへの受け止め方は、富裕層の中でも明確に二極化しています。
AIによる対応を嫌う傾向が強い方には、共通点があります。世代的には60代以上に多い傾向がありますが、年齢だけが理由ではありません。より本質的な特徴は「関係性を重視する」方々だという点です。取引先、ホテル、レストラン——すべてにおいて「信頼できる人間との継続的な関係」を重んじます。その関係性の中に、AIという第三者的な存在が入り込むことへの違和感が、根底にあります。
逆に、AIによる対応を歓迎する富裕層も増えています。特徴は「効率性を重視する」方々です。テクノロジー系の事業を経営される方、グローバルに活動される方、時間の効率化を最重要視される方に多い傾向があります。彼らは「AIの方が速くて正確で気を使わない」と評価されます。とりわけ「気を使わない」という点は重要です。先ほどの本音とまったく同じ感覚が、ここにも現れています。人に何かを頼む際の心理的ハードルを強く感じる方にとって、AIは最適なインターフェースなのです。
| 人間の対応を求めるタイプ | AIを歓迎するタイプ | |
|---|---|---|
| 重視するもの | 関係性・継続的な信頼 | 効率性・正確さ・気を使わないこと |
| 傾向 | 60代以上に多いが年齢が本質ではない | テクノロジー系事業・グローバルに活動・時間効率を最優先 |
| AIの受け止め方 | 「代替」ではなく「疎外」と感じられる | 「最適なツール」として受け入れられる |
| 最適なアプローチ | AIを徹底的に裏方に徹させ、顔の見える人間関係を前面に | AIによる効率的な対応と、要所での人間の専門的判断を組み合わせる |
この差の根本は、「サービスに何を求めているか」の違いです。人間的なつながりを求める方にとって、AIは「代替」ではなく「疎外」として感じられます。どちらが正しいということはありません。重要なのは、この違いを早く感知し、それぞれに最適な形でお届けすること。そしてどちらにも共通する原則がひとつあります。「AIの存在をサービスの質低下の言い訳にしない」ことです。
私自身、お客様の海外移動の手配をAIに全面委託し、失敗したことがあります。いただいたお言葉は、「空港のラウンジで2時間待つのは構わないが、到着時に好みのミネラルウォーターが用意されていないのは困る」というものでした。AIは最適ルートを計算できます。しかし、到着された瞬間にお客様が最初に手に取りたいものまでは予測できないのです。
富裕層は「AIで調べただけの提案」をどう見抜くか
富裕層のお客様は、AIが生成しただけの提案をかなりの確率で見抜かれます。これは現場でほぼ再現性のある現象です。
その理由は、心理学でいう「不気味の谷」に近い形で説明できます。AIの提案は、正確すぎるのです。
人間のコミュニケーションには、「論理的には説明できないが、直感的に正しいズレ」が含まれています。お客様が「イタリアンが食べたい」とおっしゃったとき、AIは評価の高いイタリアンレストランを提案します。過不足のない正答です。しかし経験を積んだ執事は、「先週もイタリアンでしたので、今日はあえて和のエッセンスを加えたイノベーティブイタリアンを」というように、データ上の最適解を意図的にずらすことがあります。このズレこそが人間性の証であり、「自分のことを考えてくれている」と感じていただける瞬間を生む。逆に、ズレのない提案は、どれほど正確でも「私を見ていない」という印象に転じます。
AIが原理的に答えられない問い
AIチャットボットは「東京で評価の高いフレンチレストラン」を瞬時にリスト化できます。しかし、「先週お母様を亡くされたばかりのお客様に、どのようなお食事をご提案すべきか」という問いには答えられません。
私であれば、華やかなフレンチではなく、静かな個室のある和食処をご提案します。そして料理長には、お料理の説明も控えめにしていただくようお伝えします。料理の評価や価格帯とは、まったく別の軸から出てくる判断です。
もうひとつ例を挙げます。毎年同じ時期に同じホテルをご予約されるお客様が、ある年だけ少し遅い時期に変更されました。AIであれば、この変化は「異常値」として処理されるだけです。私はお嬢様の受験日程が影響していると推測し、「今年は少し静かな環境をお望みではないですか」とご提案しました。こうした「言語化されていない背景」を読む力は、現時点では人間にしか持ち得ません。
「便利だが、つまらない」という評価
ある企業オーナーは、AIについてこうおっしゃいました。AIの提案は便利だが、正直つまらない。私が知らない世界を見せてくれる人間の方が100倍面白い、と。
また、ある資産家のご息女は、AIに好みを分析されるのは気持ち悪くないが、それを人間が伝えてくれると感動する、とおっしゃっています。この2つは、富裕層がAIの能力を否定しているのではなく、届け方に価値を見出していることを端的に示しています。
デロイト トーマツの富裕層調査が示す「約9割がパーソナルなご提案に満足している」という結果も、この人間的なズレと届け方の価値を、数字の側から裏づけているといえます。
本音から導かれる、AI時代のサービス設計指針
ここまでの本音と現場の観察から、サービス設計に落とし込むべき指針を整理します。
指針1:AIの活用を感じさせない形で、AIの恩恵を届ける
本音の第一が示していたのは、富裕層はAIへの依存度が高まっているにもかかわらず、「AIに頼っている」と見られることへの抵抗感を持つ方が多いという事実でした。この抵抗感は、サービスを受ける側に回ったときにも同じ形で現れます。
したがって求められるのは、AIの活用を感じさせない形で恩恵だけをお届けすることです。準備の精度、記憶の正確さ、提案の下ごしらえはすべてAIに担わせ、お客様の前ではその痕跡を残さない。「見えないAI」の徹底が、そのまま設計原則になります。
指針2:「変化への適応」を支える視点を持つ
本音の第四が示していたのは、AIの普及に対する不安と期待の混在です。夜中に考える問いを抱えている方に、効率の話だけをしても届きません。AI時代の執事・コンシェルジュに求められるのは「変化への適応をサポートする」という視点です。技術を教えることではなく、変化の渦中にある方の隣に同じ速度で立ち続けること。話を伺える相手であること自体が、この時代には価値になります。
指針3:業務を「情報処理型」と「関係構築型」に仕分ける
実務で用いている仕分けを共有します。日々の業務を2軸で整理するだけの単純な方法です。
| 区分 | 担い手 | 該当する業務 |
|---|---|---|
| 情報処理型 | AI | データ入力、スケジュール調整、候補リストの作成、定型文書の下書き |
| 関係構築型 | 人間 | 対面での会話、非言語サインの察知、信頼関係の深化、予想外のご提案 |
重要なのは、この境界線が固定的ではないことです。テクノロジーの進化と関係性の深まりに応じて更新し続ける必要があり、私はこの仕分けを毎週見直しています。たとえば1年前はAIに任せられなかった「季節に応じたギフトのご提案」も、いまでは精度が上がり十分に活用できます。しかし「このタイミングでこのギフトを贈ることの意味」を判断するのは、依然として人間の仕事です。
指針4:タイプに応じて、届け方を変える
人間の対応を求められる方には、AIを徹底的に裏方に徹させ、顔の見える人間関係を前面に出します。AIは準備の精度を高めるためだけに使い、対応はすべて人間が担う。この線引きを曖昧にしないことが信頼の前提です。一方、AIを歓迎される方には、効率的なサービスと、必要な場面での人間の専門的な判断を組み合わせます。こうした方々は「AIと人間の最適な組み合わせ」を評価されるため、人間が介在する場面を無闇に増やすと、かえって価値を下げます。
指針5:「温度」を設計する
歓迎されるAI活用を設計するには、3つの視点が必要です。
- AIが担う業務の定義。何をAIに任せ、何を人間が担うのかを組織として明確に決めます。個人の裁量に委ねると、必ず基準がばらつきます。
- AIと人間のシームレスな連携。AIの出力を、人間が自分の言葉・自分の行動へ自然に変換する訓練を積みます。ここが未熟だと、方針が正しくてもAIが「見えて」しまいます。
- サービスの温度設計。どの接点でどの程度の温かみが必要かを設計し、AIはその温度を下げない使い方に限定します。
指針6:「予測を超えた配慮」に投資する
20年以上にわたり超富裕層のお客様にお仕えしてきた経験から申し上げると、もっとも価値を置かれるのは「予測を超えた配慮」です。
博報堂の新富裕層調査2025では、世帯年収5,000万円以上の層の68.6%が金融資産1億円以上を保有していると報告されています。物質的に何不自由ない生活をされている方にとって、サービスの正確さや速さは「当然のこと」です。差別化が生まれるのは、ご自身でも気づいておられなかった願望を先読みしていただけたときだけです。
これは学術的な整理とも符合します。SERVQUAL理論(Parasuraman et al., 1988)が示すサービス品質の5つの次元のうち、AIが担えるのは「信頼性」「対応力」の2つであり、「共感性」は人間にしか提供できません。ダニエル・ゴールマンの「感情的知性(Emotional Intelligence)」の研究が示すとおり、人間の感情を読み取り適切に対応する能力は社会的な文脈の中で培われるものであり、現時点のAIが原理的に持ち得ないものだからです。AIによって浮いた時間と労力を、この「共感性」にどれだけ再投資できるか。それがAI時代の富裕層サービスの成否を分けます。
よくあるご質問
お客様にAIを使っていると尋ねられたら、正直にお答えすべきですか?
尋ねられた場合に、事実と異なるお答えをする必要はありません。問題は、こちらから「AIで調べました」「システムによると」と申し上げてしまうことです。使うかどうかではなく、見せるかどうかが品質を分けます。あわせて、AIを対応が行き届かなかった際の説明に用いないこと。AIの存在をサービスの質低下の言い訳にしない——どのお客様にも共通する原則です。
「AIでいい」とおっしゃるお客様にも、人間の対応は必要ですか?
必要です。ただし、場面が異なります。効率を重視される方は「AIと人間の最適な組み合わせ」を評価されますので、日常的なやり取りにまで人間を介在させると、かえって煩わしさを感じられます。人間が出るべきなのは、専門的な判断が要る場面と、想定外のことが起きた場面です。
AIへの態度は、年代で決まるのでしょうか?
AIによる対応を嫌う傾向は60代以上に多く見られますが、年齢だけが理由ではありません。本質的なのは「関係性を重視される」のか「効率性を重視される」のかという軸です。ご高齢でもテクノロジー系の事業をお持ちの方は積極的に活用されますし、お若くても継続的な人間関係を重んじる方はいらっしゃいます。
自社のお客様がどちらのタイプか、どう見分ければよいですか?
私は、ご依頼のされ方を手がかりにしています。「誰が対応してくれるのか」に関心が向く方は関係性を、「いつまでに終わるのか」に関心が向く方は効率性を重視される傾向があります。ただし、これは見立てにすぎません。判定を急ぐより、判定を更新し続けられる体制のほうが重要です。
「AI×おもてなし」シリーズ
本稿は、AI時代のおもてなしを5つの視点から解説するシリーズの一本です。あわせてお読みください。
- AI時代の「おもてなし」とは何か ― 執事が定義する人間×テクノロジーの新常識
シリーズ総論 - AIおもてなしと人間のおもてなしは何が違うのか ― 執事が定義する境界線と役割分担
本質論 - 執事はAIをこう使う ― 顧客の一歩先を読むための実務マニュアル
現場の実務 - AI時代のホスピタリティ研修 ― 接客品質と収益を同時に上げる企業向け導入設計
企業導入 - 「おもてなし」は日本の武器になるか ― AI時代に日本型ホスピタリティが持つ価値と展望
日本論・未来
講演・研修のご依頼について
AI時代のおもてなし・富裕層対応・ホスピタリティについて、企業・団体向けの講演および研修を承っております。年間100回、累計1,000回以上の実績がございます。業界・受講者層・課題に合わせてプログラムを構成いたします。
参考文献
- Parasuraman, A. et al. (1988). SERVQUAL:サービス品質の5つの次元
- Goleman, D.「感情的知性(Emotional Intelligence)」に関する研究
- PwC Japan(2025)調査
- デロイト トーマツ(2025)「国内富裕層意識・購買行動調査」
- 博報堂(2025)「新富裕層調査2025」
- 新井直之(2017)『執事が教える至高のおもてなし』きずな出版