
「俺の言うことが聞けないのか」
と言うリーダーが、組織を危険に晒す。
信頼とセキュリティのパラドックス
詐欺師が一番好きなのは
「裸の王様」である
ビジネスメール詐欺(BEC)の典型的な手口をご存知でしょうか。
経営者や役員になりすまし、経理担当者や秘書に「極秘で急ぎの送金」を指示するものです。
なぜ、こんな単純な手口に引っかかるのか。
それは、組織の中に「上司の指示には絶対服従」「質問や確認は許されない」という空気が蔓延しているからです。
詐欺師にとって、ワンマンで、短気で、部下に確認を許さないリーダーほど、御しやすい相手はいません。
なりすまして「急げ」と一言メールを送るだけで、部下は震え上がり、思考停止して送金ボタンを押してくれるからです。
つまり、権威主義的なリーダーシップそのものが、最大のセキュリティホールになっているのです。
あなたの口癖が
攻撃に使われている
詐欺師は、あなたの普段の口調や行動パターンを研究しています。
そして、部下が「反論しにくい言葉」を選んで攻撃してきます。
以下のような言葉を、普段から部下に投げつけていないでしょうか。
- 「今すぐやれ(緊急性)」
- 「余計なことは聞くな(秘匿性)」
- 「君を信頼している(自尊心の操作)」
- 「社長が困っているんだぞ(罪悪感の操作)」
これらの言葉は、部下の「確認する勇気」を奪います。
もし部下が、あなたのなりすましメールを受け取り、違和感を持ったとしても、「確認したら怒られるかもしれない」という恐怖が勝れば、彼らは確認せずに実行します。
その結果、あなたの資産は流出します。
悪いのは詐欺師ですが、その環境を作ったのは、他ならぬリーダー自身の「確認を許さない態度」なのです。
「疑うな」と言うリーダーの下で、
セキュリティは機能しない。
「疑え」と言える度量こそが、
組織を守る盾となる。
執事の価値は
「空気を読まずに確認する」こと
私が執事としてお仕えする際、最も大切にしているのは「お客様を盲信しない」ことです。
もちろん、信頼はしています。しかし、指示の内容が通常と異なる場合、私は必ず立ち止まります。
「恐れ入りますが、念のため確認させてください」と、あえて電話をかけます。
これは、一見すると「仕事が遅い」「融通が利かない」と思われるかもしれません。
しかし、AIがどれだけ進化しても、この「違和感を検知し、泥臭く確認する」というプロセスだけは、人間にしかできません。
「効率」や「忖度」を優先して安全を捨てるなら、執事は要りません。
嫌われてもいい。面倒だと思われてもいい。
それでも主人の資産と安全を守り抜く。その覚悟があるからこそ、私たちは「確認」という武器を手放さないのです。
リーダーがすべき
たった一つのこと
組織を守るために、リーダーがすべきことはシンプルです。
高価なセキュリティソフトを入れることよりも先に、部下にこう伝えてください。
「お金と個人情報に関わる指示は、
どんなに急いでいても、必ず私に電話で確認しろ。
確認のために私の時間を奪うことを、私は歓迎する」
この許可証を与えるだけで、部下は安心して「疑う(確認する)」ことができます。
「確認は善である」という文化を作ること。
それこそが、最強のリスクマネジメントです。
まとめ
自分は仕事ができるから大丈夫。
その「慢心」こそが、
最大のセキュリティホールである。
経験豊富な人ほど、「直感」で判断し、確認を省く傾向があります。
しかし、詐欺師はその「直感」さえもハックしてきます。
どうか、ご自身の「確認される力」を磨いてください。
部下からの「確認の電話」を笑顔で受け入れられた時、あなたの組織は鉄壁の守りを得ることになるでしょう。
