おもてなし ・ ホスピタリティの哲学 | おもてなしとおせっかいの境界がわからなければ、 おせっかいをしましょう

おもてなし ・ ホスピタリティの哲学

おもてなしとおせっかいの境界がわからなければ、おせっかいをしましょう

 

 

「おもてなし」も度が過ぎると「おせっかい」だと思われることもあります。

 

あるサーヴィスがおもてなしになるか、それともおせっかいになるかは、提供の仕方によって、またサーヴィスを受ける側の性格や立場、そのときの感情などによっても変わります。

 

つまり、どこまでがおもてなしで、どこからがおせっかいかは、明確な境目がない場合が多いということです。

 

そこで執事は、おもてなしとおせっかいの境界がはっきりとわからなくて迷った場合は、ためらうことなくおせっかいをします。

 

執事のおもてなしは、すべてのお客さまに一律というわけではありません。

 

それぞれのお客さまに応じて、最適なサーヴィスを提供するように心がけます。

 

このお客さまにはきっとこういうサーヴィスが喜んでいただけるだろう、と常に思案し、判断して行動しているのです。

 

こうしたタイプのサーヴィスを提供するには、そのお客さまがどういう人物であり、どういうサーヴィスを好み、反対にどういうサーヴィスは好まないかといった情報がある程度必要になります。

 

このように、お客さまの情報がある程度わかっていれば、「このお客さまはここまではおもてなしと感じるけれど、ここから先はおせっかいと思うだろう」と判断できます。

 

ところが初対面のお客さまの場合は、そういった情報がありませんから、おもてなしとおせっかいの境は執事にもわからないわけです。

 

私はそんなとき、たとえおせっかいに思われたとしてもかまわないので、どんどんサーヴィスすることに決めています。

 

 

 

過剰でも、しないよりはマシと考えましょう

 

街のショップで起きたケースで考えてみましょう。

 

突然雨が降り出して、来店したお客さまの服が濡れていたとします。

 

店員が取る選択肢として、タオルを渡すか、見てみないふりをするかの二択があります(ほかに「雨が降ってきましたね」と声だけかけて何もしないケースもあるでしょうが)。

 

そこでタオルを渡す行為は、相手によってはおもてなしと喜ばれるでしょうし、おせっかいと思われてしまうこともあるでしょう。

 

ですが、そこで「おもてなしと思われるかな、おせっかいと思われるかな……」と迷うくらいなら、タオルを渡したほうがいいのです。

 

どちらがいいかわからない場合は、おせっかいをする。

 

仮におせっかいだと思われても、それで怒られるようなことは、普通はありません。

 

むしろ何もしないことで、客にマイナスの評価をされてしまうほうが損でしょう。

 

「ここはおせっかいな店員がいる店だな」と思われるのと、「ここは気の利かない店員がいる店だな」と思われる危険性を秤にかければ、おせっかいだと思われるほうがはるかにマシです。

 

ですから接客サーヴィスでは、迷わずにおせっかいをすべきなのです。

 

私自身の経験をお話ししましょう。

 

あるお客さまのお子さまが小学校の面接に行くため、ブレザーを着て家を出ようとしていました。

 

私は、途中で汚してしまうこともあると考えて、普段着で出かけ、現地で着替えたほうがいいと提案しました。

 

母親は「大丈夫、ブレザーを着せていきます」といったのですが、それでも私は「何かあったら困りますから」と、半ば無理やり普段着に着替えてもらいました。

 

すると案の定、途中でアイスクリームをこぼして、服を汚してしまったのです。

 

おせっかいではありましたが、あくまで普段着で出かけることを勧めてよかったと胸をなでおろしました。

 

また別のお客さまが、入院している母親の見舞いに行くというので、私はお花を買っておきました。

 

お客さまは「自分の母親に花なんてカッコ悪いからいいよ」とためらったのですが、それでもお花を持っていくことを勧めたのです。

 

すると病院の母親はお花をとても喜んでくれたそうで、お客さまは「花を持っていってよかったよ」と感謝してくれたのです。

 

おせっかいは過剰サーヴィスにつながることもありますが、たとえそうなったとしても、「おもてなし」と「おせっかい」の境目で迷ったときは、やはり「おせっかい」をするべきでしょう。

 

執事が教える 至高のおもてなし―心をつかむ「サーヴィス」の極意

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Category おもてなし・ホスピタリティの哲学 . ブログ 2020.08.30

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