「お客さま」と呼ぶと、心が遠ざかり、壁ができます

「お客さま」と呼ぶと、心が遠ざかり、壁ができます

 

 

 

執事は基本的に、お客さまのことを文字どおりに「お客さま」と呼ぶことはありません。

 

可能な限り、その方のお名前で呼ぶように心がけています。

 

そのようにお客さまに特別感を味わっていただくことも、サーヴィス業にとって大切な仕事の一つです。

 

「お客さま」というのは、いかにも相手の個性が感じられない無味乾燥な呼び方です。

 

それよりは、「私はあなたを一個人として認識してサーヴィスしているのです」という姿勢を示したほうが、相手も親近感を抱いてくれるというものです。

 

世の中には、名前で呼んで特別感をうまく提供しているサーヴィスがあります。

 

航空会社のマイレージプログラムの上級会員になっている方はご存知だと思いますが、会員の特典として、優先搭乗や専用ラウンジの利用など、さまざまなサーヴィスを受けられるメリットがあります。

 

それに加えて、飛行機のなかではキャビンアテンダントが座席までやってきて、

 

「新井様、本日はご搭乗ありがとうございます。上着をお預かりいたしましょうか」

 

とわざわざ声をかけてくれることもあります。

 

これが、「お客さま、ご搭乗ありがとうございます」と、通り一遍の挨拶であれば、きっと聞き逃してしまうでしょう。

 

たった一言、「新井様」と名前で呼んだだけで、感情的特別感が生まれます。

 

名前で呼ばれると、初めてのキャビンアテンダントのはずなのに、以前から知り合いだったような気持ちになり、安らぎを感じます。

 

飲食店やホテルなどの接客業では忙しさもあって、つい「お客さま、こちらでございます」などといってしまいがちです。

 

「お客さま」と口にしたとたん、双方の距離が広がって、心の壁ができてしまいます。

 

反対に、名前を呼ぶことでお客さまとの距離はぐっと近くなるのです。

 

とくに予約がある場合は、少なくとも苗字はわかっているのですから、「新井様、お待ちしておりました」「新井様、こちらがメニューでございます」と苗字で呼びかけることができるはずです。

 

それができないのは、日ごろから名前で呼ぶことを習慣づけていないからです。

 

おもてなしは最初と最後が肝心です。

初めてお会いしたときに、「お客さま」ではなく「新井様」と呼べば、相手に特別感を味わってもらえると同時に、サーヴィスしたこちらのことも印象に残るでしょう。

 

常に、お客さまを名前で呼ぶことができないかと考え、名前で呼ぶ癖をつけるといいでしょう。

 

もちろん、いつも名前がわかるわけではありません。

 

しかし手がかりはあります。

 

冬場ならコートを預かるときに、さりげなく裏地のネームで名前を確認するテクニックがあります。

 

相手が「どうして名前がわかったんだ?」と訝しがっても、「コートをお預かりしたときにちらっとお名前が見えましたので」と言えば、そう気分を害することもないでしょう。

 

最後までどうしても名前が判明しないこともあります。

 

もし、お客さまが会計でクレジットカードを利用したら、それで名前が確認できます。

 

お見送りのときに「新井様、本日はありがとうございました」と名前で呼べば、最後の印象はいいはずです。

 

肩書での呼びかけは慎重にしましょう

 

場合よっては名前でなく肩書で呼ぶこともありますが、肩書での呼びかけは慎重に考えるべきです。

 

会長、社長はそもそも特別感があるのでいいのですが、副部長や部長代理といった微妙な位置づけの場合は、素直に名前で呼ぶのがベターでしょう。

 

受け取る側がマイナスの気分を感じてしまう可能性もあるからです。

 

また、相手の職業名で呼ぶことは避けるべきです。

 

私も「バトラーさん」と呼ばれたことがありますが、あまりすっきりと受け取れるものではありませんでした。

 

相手の地位に尊敬の念を示す場合や事情によって、肩書で呼ぶケースはたしかにあります。

 

たとえば執事として社長の家族のお世話をする際、苗字で呼ぶとほかの家族と混乱するので「社長」と呼んだりもします。

 

ただし、基本はやはり名前で呼ぶことを心がけるべきでしょう。

 

Category おもてなしの哲学 . ブログ 2020.08.31

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