おもてなし ・ ホスピタリティの哲学
おもてなしのできる人を演じる方法がございます
「おもてなしができる人」にはなりたいけれど、「いまさら一日一善とか人をほめるとか、照れくさくてやりにくい」という人には、「演じる」ことをお勧めします。
試してほしいのが、「飲み会の幹事を進んで引き受ける」ことです。
「立場が人を変える」という言葉があります。
たとえば、それまではどちらかというと自分勝手で協調性がなかったのに、あるプロジェクトのリーダーに指名されたら、メンバーのことを常に気にかけるようになり、職場の盛り上げ役にまでなった人。
頼りなげで気が弱かったのに、子どもを産んで母親になったとたん、たくましくしっかり者になった女性。
そんな人が周囲にいないでしょうか。
立場が変わると目の前の風景が一変します。
同じ風景なのに、見え方が違ってくるのです。
ある立場になると、その立場にふさわしい人間になろうという気持ちが、無意識のうちに働くのでしょう。
「おもてなし」も同じです。
「おもてなしをせざるをえない立場」になることで、その立場にふさわしい人間になっていくのです。
その「おもてなしをせざるをえない立場」として、一番手軽でやりやすいのが「飲み会の幹事」というわけです。
ホームパーティーのホストや目上の人との会食の幹事役でもいいでしょう。
とにかく場を仕切らなければならない立場に、積極的に立候補してみてください。
「本当はこんなことするガラじゃないんだけど」と思っても、回数を重ねて「できる人」を演じているうちに、演じ方がうまくなります。
そのうち、本物の「おもてなしができる人」になります。立場が人をつくりあげるのです。
さて、飲み会の幹事になったところで、トンチンカンな幹事ではおもてなしどころか、評判を落とすだけです。
段取りが悪いと、「あいつは何をやらせてもダメだ」と、仕事の評価まで落ちかねません。
では気の利く幹事、おもてなしができる幹事になるにはどうしたらよいのでしょうか。
まずは、そもそもなぜ宴会をするのか、宴会を通じて何をしたいのか、上司の意図を汲み取ることです。
特定の誰かを盛り上げたいとか、部署のチームワークをよくしたいとか、上司なりに考えているはずです。
そこを読み取り、狙いにあった宴会をアレンジします。
たとえば、年度初めで異動してきた人が多い職場の宴会なら、一同が顔を合わせて話しやすい円卓の中華料理店を選ぶとか、インドに赴任する人の壮行会だったら、現地ではなかなか食べられないであろう会席料理にするとか、店選びや、人選、席順の決定など、その段取りすべてが、おもてなし上手になるための学びとなります。
幹事役をうまくこなすカギは、根回しと情報収集です。
「今度こんな宴会をやるんだけど」と、参加者に趣旨を伝え、ドタキャンなしで時間通りちゃんときてくれるよう根回しし、「誰と誰を隣にするのはNG」など、こまかい人間関係の情報を集め、席順を考えておきます。
かのノーベル賞の晩餐会でも席順のアレンジは相当考えられて決まるそうです。
それに比べればスケールは小さいですが、職場の宴会の席順でも、どうアレンジするかによって「いい宴会」にも「悪い宴会」にもなり、「もてなし上手な幹事」にも「ダメ幹事」にもなります。
幹事を引き受けると、日常生活での視点も変わります。
典型的なのは、飲食店を見る目です。
ランチで利用した店でも「ここは宴会にどうかな?」と、常に宴会とリンクさせるようになります。
当日も目配り気配りは欠かせません。
自分の料理はさておき、全員に料理はちゃんと行き渡っているか、上司のコップにビールがまだ入っているか、ポツンとしている人はいないか……。
たかが宴会ですが、その「たかが」の経験を積み重ねることで、先読みして行動するクセがつくのです。
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Category おもてなし・ホスピタリティの哲学 . ブログ 2020.09.05